股関節インピンジメントにおけるcam形態・pincer形態と疼痛評価の考え方

1.股関節の疼痛評価は総合的に判断する

股関節の可動域制限や疼痛を評価する際には、本人の訴え、臨床所見、画像所見を総合して判断する必要があります。

画像所見で確認される骨形態の代表例として、大腿骨頭頸部移行部の形態に関わるcam形態と、寛骨臼による大腿骨頭の被覆に関わるpincer形態があります。また、両者の特徴を併せ持つ混合形態もあります。

2.cam形態・pincer形態とは何か

cam形態は、大腿骨頭頸部移行部に凸形状がみられ、骨頭の球状性やhead-neck offsetが局所的に失われる形態です。多くは前上方から上方にかけて確認されます。

pincer形態は、寛骨臼による大腿骨頭の被覆が局所的または全体的に大きくなる形態です。寛骨臼縁の局所的な過被覆、寛骨臼後捻、寛骨臼突出などが関係します。

これらの形態がある場合、股関節屈曲、特に内転・内旋を伴う肢位では、大腿骨頭頸部移行部と寛骨臼縁の接触が生じやすくなることがあります。その接触が反復されることで、関節唇や軟骨への負荷が高まり、疼痛や可動域制限に関与する可能性があります。

3.骨形態には個人差がある

しかし、cam形態やpincer形態は、その範囲や大きさ、位置に個人差があります。どの部位に、どの程度の形態変化があるのか。そして、どの股関節角度で接触が生じやすいのかは、単純に一方向の画像だけで判断できるものではありません。

一般的に、画像評価ではレントゲン画像が用いられます。レントゲン画像は初期評価として重要ですが、股関節は三次元構造であるため、大腿骨頭頸部移行部や寛骨臼の形態を立体的に把握するには限界があります。特に混合形態では、個人ごとの形態パターンはさらに多様になります。

4.臨床テストだけで原因組織は特定できない

臨床では、FADIRテストなどのインピンジメント徴候に加え、FABERテストのような疼痛誘発・可動域評価も用いられます。

しかし、これらのテストは症状を再現する手がかりにはなっても、誘発された疼痛が骨性接触によるものか、関節唇・関節包・筋腱・神経など他の組織によるものかを単独で特定することはできません。

さらに、cam形態やpincer形態は無症状者にもみられることがあります。そのため、画像上で骨形態の特徴が確認されたとしても、それだけで疼痛や可動域制限の原因と判断することはできません。

5.骨形態は背景因子として捉える

画像所見でcam形態やpincer形態が確認された場合、それをすぐに「インピンジメントによる疼痛」と結びつけるのではなく、危険因子・背景因子として捉えることが重要です。

その上で、本人の訴え、症状が誘発される肢位、可動域制限の方向、臨床テストの反応を照らし合わせながら、股関節の可動域制限と疼痛を慎重に評価する必要があります。

 

投稿者
福山真樹

メディカルアナトミーイラストレーター
理学療法士
イラストスタジオ福之画代表
鳥取県理学療法士会 イラスト担当
日本理学療法士会 推薦 公式イラスト担当
京都芸術大学通信教育部イラストレーションコース非常勤講師(美術解剖学・添削採点担当)

解剖学的構造と運動学的関係性を踏まえた図解、疾患理解を助ける病態イラスト、教育・出版向けの専門的な人体イラスト制作を行っています。
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