肩甲上腕関節を描く視点:上腕骨頭中心と関節接触点の違い
肩甲上腕関節の運動を理解するとき、上腕骨頭が関節窩に対してどのように動くかを考えることは重要です。
しかし、ここで注意したいのは、「上腕骨頭がどこにあるのか」と「関節面のどこで接触しているのか」は、同じ意味ではないという点です。
肩関節の運動を図として整理していくと、この2つを分けて考える必要があることが見えてきます。
今回掲載しているイラストは、完成した情報をそのまま描き出したものではありません。
肩甲上腕関節の運動を理解するために、「何を大切な情報として扱うのか」「なぜその情報を区別して描く必要があるのか」を整理しながら制作している段階のものです。
制作途中のイラストを掲載しているのは、完成までの過程を見せるためではありません。
イラスト制作を通して、関節運動をどのように分解し、どの視点を重視して整理しているのかを共有するためです。
1. 上腕骨頭中心とは何を見る視点か
上腕骨頭中心とは、肩甲骨関節窩に対して、上腕骨頭の中心がどの位置にあるかを示す見方です。
この視点では、上腕骨頭全体が関節窩に対して前方・後方・上方・下方のどちらへ偏位しているのか、あるいは関節窩の中心付近に保たれているのかを考えます。
肩関節の評価や運動療法では、上腕骨頭が関節窩に対して大きく偏位しないように制御されているかを考えることがあります。
つまり、上腕骨頭中心を見ることは、肩甲上腕関節における骨頭全体の位置関係を理解するための視点です。
2. 関節接触点とは何を見る視点か
一方で、関節接触点とは、上腕骨頭と肩甲骨関節窩が実際に接触している部位を示す見方です。
これは、上腕骨頭全体の位置を見るというよりも、関節面のどこに接触や圧が生じているのかを考える視点です。
肩甲上腕関節では、肢位や運動方向によって、関節面同士の接触部位が変化します。
そのため、上腕骨頭が関節窩の中央付近に位置しているように見えても、実際に圧が加わっている部位が関節窩の中央とは限りません。
ここが、上腕骨頭中心と関節接触点を分けて考える必要がある理由です。
3. 図にすることで見えてくること
文章だけで説明すると、上腕骨頭中心と関節接触点の違いは少し抽象的に感じられるかもしれません。
しかし、図として整理すると、骨頭全体の位置を示す視点と、関節面の接触部位を示す視点が異なることを確認しやすくなります。
今回のイラスト制作では、この違いを図として見える形にすることを目的にしています。

肩関節の構造を描くことは、単に解剖学的な形を写すことではありません。
どの情報を重視し、どの関係性を見えるようにするかを考えながら、理解に必要な要素を整理していく作業でもあります。
肩甲上腕関節の運動を単に「骨が動く」として描くのではなく、上腕骨頭中心と関節接触点を分けて捉えることで、関節運動をより立体的に考えることができます。
この視点を持つことで、肩甲上腕関節の運動を、骨頭の位置制御と関節面への負荷分布の両面から捉えやすくなり、臨床における評価と運動療法を考えるための土台になります。
投稿者
福山真樹

メディカルアナトミーイラストレーター
理学療法士
イラストスタジオ福之画代表
鳥取県理学療法士会 イラスト担当
日本理学療法士会 推薦 公式イラスト担当
京都芸術大学通信教育部イラストレーションコース非常勤講師(美術解剖学・添削採点担当)
解剖学的構造と運動学的関係性を踏まえた図解、疾患理解を助ける病態イラスト、教育・出版向けの専門的な人体イラスト制作を行っています。
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