肩関節評価の基本視点―肩甲骨の位置から考える肩甲上腕関節の動き
はじめに
肩関節疾患では、痛みや可動域制限が肩甲上腕関節周囲に現れることが少なくありません。そのため、臨床では肩甲上腕関節の可動域や疼痛に意識が向きやすくなります。
しかし、肩関節の運動は肩甲上腕関節だけで成立しているわけではありません。胸鎖関節、肩鎖関節、肩甲上腕関節、そして肩甲胸郭関節が関与し、それらの総合的な運動として上肢の挙上や外転が現れます。
そのため、肩甲上腕関節を評価するときには、上腕骨だけを見るのではなく、その土台となる肩甲骨の位置を確認することが重要です。
肩甲上腕関節評価における「土台」としての肩甲骨
肩甲上腕関節は、肩甲骨の関節窩と上腕骨頭によって構成されます。可動域評価では、上腕骨がどれだけ動くかに注目しがちですが、実際には「どの位置にある関節窩に対して、上腕骨頭がどのように動いているのか」を捉える必要があります。
つまり、肩甲上腕関節の評価は、上腕骨だけの動きを測定しているのではありません。肩甲骨の関節窩を土台として、その上で上腕骨頭がどのように動くかを評価していると考えることができます。
肩甲骨の位置が変われば、関節窩の向きも変わります。関節窩の向きが変われば、同じ上腕挙上であっても、上腕骨頭の運動方向や可動域の意味づけは変化します。
肩甲骨の位置が曖昧だと、評価結果も曖昧になる
肩甲骨の位置を確認しないまま肩甲上腕関節の可動域を評価すると、その評価結果には肩甲骨アライメントの影響が含まれる可能性があります。
例えば、可動域制限がある場合でも、それが肩甲上腕関節そのものの制限なのか、肩甲骨の位置や胸郭上での可動性の影響を受けた結果なのかを整理しにくくなります。
この状態では、痛みや可動域制限の情報を統合して考察することが難しくなります。肩関節評価で得られる情報を整理するためには、まず評価条件としての肩甲骨の位置を明確にしておく必要があります。
イラストで示したい視点
今回のイラストでは、肩甲骨の関節窩と上腕骨頭の位置関係を示します。
見てほしいのは、上腕骨の動きそのものではなく、その動きがどの肩甲骨の位置を土台として生じているのかという点です。
肩甲骨は、肩甲上腕関節運動を支える基準面として機能します。したがって、肩関節評価では、上腕骨の動きだけでなく、肩甲骨の位置と関節窩の向きを合わせて観察することが重要です。

まとめ
肩関節運動は、複数の関節が関与する総合的な運動です。
その中で肩甲上腕関節を評価する場合、肩甲骨は上腕骨頭運動の土台となります。肩甲骨の位置が曖昧なままでは、上腕骨の動きの解釈も曖昧になりやすくなります。
肩関節評価は、肩甲骨の位置を確認することから始めることで、痛みや可動域制限をより構造的に捉えやすくなります。
投稿者
福山真樹

メディカルアナトミーイラストレーター
理学療法士
イラストスタジオ福之画代表
鳥取県理学療法士会 イラスト担当
日本理学療法士会 推薦 公式イラスト担当
京都芸術大学通信教育部イラストレーションコース非常勤講師(美術解剖学・添削採点担当)
解剖学的構造と運動学的関係性を踏まえた図解、疾患理解を助ける病態イラスト、教育・出版向けの専門的な人体イラスト制作を行っています。
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